昨日は今年最初の本格的な干潟調査を行った。
日中では今年一番くらいの低い潮位で風も凪いだ最高のコンディション、しかし今年の干潟は例年になく寂しい。
ここのところの低温で海水温の上昇が例年に比べて半月ほど遅れているというのもあるが、昨夏の異常高温で干潟が磯焼けしてしまったようなのだ。
例年は底生生物が活発に動いている砂地以外の泥状のエリアが、全体に赤茶けた層で表面を覆われている。
養分が少ないのかどうなのか判らないが、とにかく生き物の気配が少ない。
底曳き漁師の話では、昨年の夏は商売にならないくらい魚の死骸がプカプカ浮いていたそうなので、閉鎖的海域である北浦海岸の干潟は、モロに影響を受けてしまったようだ。
竿はお触りじゃなくて、さはさりながら、干潟にも春は訪れていて、微かながら生命の営みが繰り広げられている。
干潟は毎回違った景色を見せてくれるが、今回はフクロノリがやたに打ち上げられていた。
直径が20cmほどもあるので海岸に晒首が並んでいるような光景、多分前日の真冬並みの大時化で打ち寄せられたものだろう。
その他目がつくのは昨年から増え始めたタイラギ貝とハボウキ貝、よく似ているのだがタイラギが二等辺三角形なのに対しハボウキは先がやや三角にアールがかかっている。
タイラギは貝柱が大きく美味だが、ハボウキは小さく味がない。
ここ4年ほどツメタ貝や卵塊である砂茶碗の駆除をしていて、最初は掌ほどの舌を広げた巨大ツメタ貝が干潟を席巻していたが、去年あたりから巨大個体は姿を消して小粒な個体に変化してきている。
巨大ツメタと入れ替わるようにタイラギが増えた、ところが同じく一昨年からあれほど大量に発生していたキヌタアゲマキの姿が少なくなってしまった。
これは昨夏の異常高温もあるが、店主が密かに干潟観察の度に5個ほどづつ採って晩酌のアテにしていたのを近所のおばさんに目撃されてしまい、次の大潮の時に干潟一面が掘り起こされて乱獲された事件のせいではないかと思う。
http://ameblo.jp/veeten/day-20100517.html
キヌタアゲマキは今ではかなり稀少種らしいので、今年も一回くらいにしておいて、来季の繁殖を期待したいと思う。
さて本命のアマモちゃんだが、結論から述べると福島原発と同様非常に厳しい状態にある。
前述した様に元来北浦海岸の干潟は出口の無い閉鎖的海域であるために、夏場の高温障害の影響でアマモは越年出来ないということがここ数年の観察で判っている。
つまり地下茎で繁殖しないので、流れアマモ等によって着床した種によって部分的に形成される極めて脆弱な一年生のアマモ群なのである。
ここ三年ほど試験的に移植を試みてきたが持続可能な方法では無いため、昨年より種のついた流れアマモを植える方法に変更している。
今年の干潟観察はこの種植結果の検証が主な課題なのだが、昨夏の高温障害の影響も相まって見極めが非常に困難である。(毎日東電の記者会見を聞いているので、文体も東電の隠蔽体質と同化してきているような気もしないではないが、、、)
まあともあれ多少なりとも生えてくれているので、例年通り先を丸めた鉄筋でマーキングするのだが、昨年まで安定的していたコアマモの群生がおそらく昨夏の高温障害で消失してしまっていて、その分かれと思える様なコアマモらしき個体と、何故か今年はとても細いアマモの個体が混在していて見分けがつきにくい。
仕方がないので片っ端からマーキングしていって、もう少し成長具合を見てからアマモかコアマモかの判断することにした。
個体数分布図をご覧いただけると解るのだが、今回の調査では例年よりかなり狭い範囲で、堤防側の方に分布が集中している。
http://www10.ocn.ne.jp/~veeten//slo/amamo/amamo.html
これがどういう意味なのかは今後の生育状況と、今年も昨年と同じく流れアマモを植えて来年の結果を見ないと比較検証が難しいのではないかと思われる。
しかしこのけなげに生えているアマモを見ると、ついつい感情移入してしまい胸がキュンとなってしまう。
今年は昨年のように房々とした群生は期待できそうにないが、とりあえずこれから夏までの間経過観察を続けたいと思う。
打ち上げられたフクロノリ
マーキングしたところ
う~ん、か弱いアマモ